MiCBT(マインドフルネス統合認知行動療法) とは?

MiCBT(マインドフルネス統合認知行動療法) とは?

B・カイユン博士      K・エルボーン博士

近年、マインドフルネスを取り入れたセラピーが増えています。

MiCBT(マインドフルネス統合認知行動療法)もその流れを汲み、実証に基づいたマインドフルネスの技術と認知行動療法の原則を実用的に統合させて、日常のストレスから様々な心理疾患にいたるまで幅広い治療にたずさわっています。MiCBTの基盤の概要と、MiCBTセラピーの基本的な要素やしくみを下にまとめます。

マインドフルネスとは?

マインドフルネスとは、私たちの体内や心で体験される出来事一つ一つに、価値判断も反応もせず受け入れるような姿勢で意識を向け、この瞬間から次の瞬間へその意識を持続することです。マインドフルなあり方を学ぶにつれて、色々な出来事をとらわれのない無執着の姿勢で体験できるようになっていくので、ストレスや不安症、うつといった日常の苦しみにも対抗できるようになっていきます。

MiCBTで使うマインドフルネスは、2500年前にインドで発祥しアジア中に広められた、ヴィパッサナー瞑想法に端を発します。ヴィパッサナーとは「物事をありのままに観る」という意味です。マインドフルネスの原則としくみの中でも特に大切なのは、「エクアニマスな心」と「無常」です。

エクアニマスな心

エクアニマスな心とは、私たちが体験するさまざまなことがらに対して、中立的な姿勢を保っている状態を指します。それは、不快な体験を嫌うとか、快い体験を欲するとかいったことを、しないような心の境地のことです。反応しないバランスのとれた心、沈着冷静な心と言い替えてもいいでしょう。

エクアニマスな心というのは、マインドフルネスの技術のなかでもとても重要なものです。それは、たとえどんなことを体験しようとも、心がエクアニマスであれば、あまり反応したり批判的になったりしないでいられるし、さらに自分をうまく制御し、穏やかでとらわれのない気持ちで日常の生活を営んでいけるようになるからです。

無常

マインドフルネスの修行は、普遍的な事実である「無常」、つまり私たちの心や感情を含む全てのものは常に変転しているということ、について教えてくれます。私たちの内なる体験も常に変転するということを実際に経験することを通して、自分というものをもっと柔軟性や客観性に富んだ見方でとらえられるようになっていきます。ストレスや不幸につながるような、凝り固まった見方や癖となってしまった習慣などに、距離を置けるようになるのです。

マインドフルネスの練習とは?

毎日のできごとを観察するだけでも、日常レベルでのマインドフルネスの練習はできますが、マインドフルネスの技術を身につける最も効果的な方法は、座って行う本式の瞑想です。本式の瞑想だと、日常生活では避けようのない様々な刺激から離れ、意識を自分の内にのみ集中することができるからです。瞑想は私たちに、色々な内なる経験を再プロセスする機会を与えてくれるわけなのですが、たとえその内なる経験が辛い思い出などであっても、バランスのとれた受容の精神で再プロセスできるようにしてくれるのです。

マインドフルネスの本式の瞑想では、まず自分の呼吸に注意を向けて、集中力を養い、どこに意識を向けるかというコントロールを身につけるようにします。これだけでも、不毛な思考に邪魔されることがかなり減るでしょう。訓練中には、思考が音声や映像となって次々と浮かんでくるでしょうが、そういった思考の内容にとらわれたりせずに「ただの思考。常に変転するこころの中のできごと」と客観的にとらえ、そしてまた自分の呼吸に意識を戻すのです。そうやって、色々な思考が浮かんでも反応しない術を学習してゆくのです。また、思考というものが私たちに影響したり私たちを定義づけたりできるものではない、という直接の体験が得られるのです。

同じように、体の感覚に注意を向けるときは、快い感覚であれ不快な感覚であれかまわずに「ただ単なる体の感覚」と客観的に感じる術を学習してゆきます。思考やその他の色々な経験と同じく、体の感覚もまた無常であり、どんなに快くても不快であっても必ず過ぎ去る性質なのだということを、マインドフルネスの修行は私たちに気づかせてくれるのです。

この事実に気づいていくにつれて、体の感覚というものは本質的に単なる体験で、それに反応しない限り私たちに影響をおよぼさない、と観察するすることがだんだん容易くなっていきます。なぜ体の感覚を特別視するかというと、私たちは体の感覚を通してしか、感情を感じることができないからです。

したがって、体の感覚に反応しないように訓練することは、感情を受けいれてから手放せるようになること、感情によって苦しまないようになることにつながります。つまり、うまく感情制御できるようになるのです。

CBTとは?

私たちの感情や行動は、私たちの持つ思考に大きく影響されます。CBT(認知行動療法)は、不安症やうつなどに悩む人々が、不毛な思考の内容を変えたり、逃避や依存などの順応性に欠けた対処方法を変えたりできるように、導いてくれます。CBTでは、上手な自己主張などの社会技能の訓練や、不快感ゆえつい避けてしまうけれど、それが心の苦しみを生みだしているような状況を、あえて避けない暴露法という治療法などがよく使われます。また、不毛な思考と現実のあいだにズレがあるかどうかの検証も、CBTでよく使われる方法です。

MiCBT(マインドフルネス統合認知行動療法)

MiCBTは4つの段階から成る心療方法で、私たちの感じ方や不毛な行動を改善する手助けをするために、マインドフルネスと認知行動療法(CBT)の基盤とを統合させています。ですが、MiCBTがしてくれる改善のための手助けは、CBTとは違ったプロセスを経てなされます。非現実的な思考や思い込みを修正することによって不毛な行動も変えようとするのがCBTです。MiCBTは、非現実的な思考や思い込みを維持するような心のしくみの方を自在に操れるような技術を、マインドフルネスの訓練を通して習得することを手伝います。つまりMiCBTは、ただ単に思考の内容を変えるだけではなく、思考のプロセスなどの心のしくみ自体を変える手助けをしてくれるのです。

反応癖を変えていくには

CBTと同じく、MiCBTも暴露法や馴化の原則を使って、癖となった不毛な反応や対処法を変えていくことを目指します。しかし通常のCBTと違う点は、MiCBTでは、そういった反応の癖は自分の体の感覚に対する反応が積み重なった結果である、と見なすことです。感情に伴う体の感覚は私たちのさまざまな考え方の結果生じるものですが、私たちはその体の感覚に反応して、多くはもう幼少の頃から、自分なりの方法で不快感を減らすために反応の習慣を作っていきます。体の感覚は全て気づき受け入れながら、そういった反応をあえてしないということが、習慣化した感情や行動にも変化をもたらすことにつながり、感情的にも楽になります。

対人関係のマインドフルネス

MiCBTは辛い思考や感情や行動を変えていく手助けをしてくれるだけではなく、人間関係を改善する手助けもしてくれます。MiCBTで習得する技術は、他人に反応したりせず、自分や他者に対する理解を深め受け入れる方法を教えてくれます。その結果、人間関係の調和が取れやすくなり、辛い気持ちや行動のぶり返しも未然に防げることが多くなります。こういった人間関係の改善に関することは、MiCBTの第三段階で説明されています。

マインドフルネスから思いやりへ

MiCBTの第四段階は、私たちがはじめの三段階で学んだ技術を使って、自分や他者への思いやりを育てていけるよう教えてくれます。はじめの三段階を通じて私たちの多くが気づくのは、自分の作り出す感情が好感情であっても悪感情であっても、それに一番はじめに影響される人物は自分なのであるということです。自分で決めて実行に移す能力や許容性、そしてさまざまな改善などが、深く根ざした実感として感じることができるようになるのは、たいていMiCBTプログラムの最終段階である第四段階を終える頃です。

プログラムの期間

MiCBTプログラムは大抵8から12回のセッションを必要としますが、問題の程度や目標技術のレベルによっては、6回で終了するときもあれば、必要な限り延長するときもあります。

最高の経過を望むのなら、セッションの頻度は1週間から2週間に一度くらいが最適です。